MY craft house とんび我楽多堂  車輌工作日誌

個別性や多様性を再現するにはコストがかかる

 前回に続いて模型とコストの話です。



 5年前、10年前と比較し鉄道模型や鉄道系ホビー商品の価格がじわりじわりと上がってきています。その原因は生産を委ねてきたアジア諸国の人件費が上がってきたことや原材料費やエネルギーコストの上昇などもありますが、最も大きな値上がり要因は多くの模型製品がユーザーの精密化要望によって商品の細かい作り分けを施すようになり、大量生産型から少量多種生産型へとシフトしてしまったことではないでしょうか。



 ひと昔前までは一体モールドが当たり前だった手すりやホイッスル、開放テコが別パーツ化されるようになったことも値上がり要因のひとつではありますが、それ自体だけでは大きな価格上昇にはならないでしょう。金型に細かいディティール表現を追加したとしても生産過程においてはコストアップ要因にはならないはずです。

 コストアップの一番の要因は精密化に伴って同じ形式でも1車両ごとに異なる装備品や窓配置、屋上配管、点検蓋などを細かく作り分けるために専用の金型を起こすことが当たり前になってきたことや、調査ならびに設計コストが膨らみ続ける傾向にあることではないでしょうか。

 昔であればある形式のもっとも標準的な形態をプロトタイプに金型を設計し、大量に生産することによって金型を起こすコストが広く薄く分散できていました。標準形態と異なるディティールについては各モデラーがパーツを付け加えるなどして自分の思い入れのある車両に仕立て上げていくというのが20年以上前までのスタイルでした。

 しかしTOMIXのHGモデル投入やマイクロエースの鉄道模型事業参入あたりから、超精密化やマイナーな特定車両・編成の模型化が進み、メーカーが何から何まで全部再現しないといけないような状況が生まれはじめたような気がしています。わずかでも実車と異なる箇所があるとエラーと騒がれるようになり、実物と違ってもコスト上昇を避けるためオミットするということもやりにくい状況になってしまいました。



 それに加えレディトゥラン志向が高まり、ホイッスルや手すりなどの細かいパーツはメーカー側で全て装着済みにし、行先方向幕やサボも全て印刷済みにしておかないといけないという流れも生まれています。KATOの場合それがかなり徹底していてユーザー任意で取り付ける追加パーツがほとんどない状態で、行先方向幕やサボなどのステッカーもつけていない商品があります。そうすると一見手軽にすぐ遊べて便利そうに見えるのですが、ここでまたユーザーの好みに合わせ同じ形式でも仕様違いの商品を設定しないといけないことになり、流通や在庫管理コストが上がる要因になります。例)14系14形客車を「さくら」編成に特定し、さらに国鉄時代とJR時代に作り分けするなど。

 さらにいえばユーザー自身もメーカーや販売店主導の限定された発売時期に合わせてしか欲しい商品が買えなくなるというデメリットも個別性や多様性というメリットと引換えに受け入れざる得なくなりました。



 最近では個別性とか価値観の多様性という言葉がもてはやされていますが、我々が忘れてならないのはそれを実現するには大きいコストを負担し非効率さを受け入れないといけないということです。自分の好みや価値観に合わせた商品を得るにはそれ相応の対価を支払う必要があるのです。

 問題はそのコストを誰がどういう形で負担するかなのですが、先に述べたように20年以上前はユーザーが銀河モデルなどから発売されているディティールアップ用のパーツを各自入手して自分の手で装着したり、塗装を塗り直すといったことで個別化・多様化のコスト負担をしてきました。しかし現在はKATO・TOMIX・マイクロエースなどの完成品メーカーが個別化・多様化の作業を行い、ユーザーがこれまでよりメーカーにお金を多く支払うという形でコスト負担しています。

 以前は大手の完成鉄道模型メーカーは多くの鉄道模型ユーザーの最大公約数的な要望を満たし、共通性の高い部分だけを担っていれば良かったのですが、今はかなり少数の個別性が高い要求についてもメーカー側が満たしていかないといけない状態です。共通項が少なくなればなるほど量産効率がどんどん下がり、1商品の1個あたりの設計ならびに生産コストが上昇していくことになります。

 メーカー側はその非効率さをなるべくユーザーに転嫁させないよう円高を活かして海外生産を行い製造コストを抑え込むなどの企業努力でカバーしてきました。しかし前回述べたようにこのような形で製造コスト低減を図ることが近年難しくなってきています。



 もはや昔のように鉄道模型商品をあっさりと簡略化したディティール表現に戻しさえすれば売価が下げられるというほど簡単な話ではありません。残念ながら鉄道模型ユーザーにのしかかるコストはお金がかかるか手間や時間がかかるかの違いで重くなることは避けられようにないと思います。

 大事なことはいかにより効率よく鉄道模型というものづくりを進めるかということを我々自身が考えていくことでしょう。

 多くの模型ユーザーにとって共通性の高い要望は大手メーカーに担ってもらい、個別性の高い要求は自分たちの自助努力で解決していくというスタイルが一番効率がいいのではないでしょうか?



 大勢の人が移動する区間は新幹線で高速に大量輸送した方がよく、末端輸送はバスやタクシーに任せるべきです。

 今の鉄道模型界は自分が好きなときに好きな場所から行きたいところまで送ってくれて便利だからみんなタクシーで移動しましょうという流れです。毎日毎日タクシーばかり使っていて家計が持ちますか?
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by mycraft-tonbi | 2014-02-09 20:14 | 世情
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